2014 映画ベスト20 11位〜20位 そして私は映画を観る

20位 『RUSH』

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 正直ロン・ハワードはどちらかというと苦手な部類だったけど、今回はあの手堅過ぎる演出と「性格真反対のトップレーサー同士のぶつかり合い」というシンプルなテーマが上手く噛み合ったことで一切無駄のない骨太な作品に仕上がっていてとても良かった。演出を間違えれば大半の観客がシラけてしまうだろう、ラストにラウダのする決断も何故彼がその選択をしたのかがしっかりと腑に落ち、そして感動に昇華させる手腕は流石というべき。

19位 『プリズナーズ

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 「ドゥニ・ヴィルヌーヴ✖︎ジェイク・ギレンホール」だと『複製された男』よりこっちの方が自分は好み。雪景色の中での狩猟をロングで画面いっぱいに映し出すオープニングショットを始めとするロジャー・ディーキンスの冷たく美しい画作りが、静かに狂ったサスペンスと共に2時間半楽しめるんだから大満足。

18位 『Seventh Code』

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 前田敦子という人物の「何を考えているのかわからない」不気味さを、黒沢清がフルに活かした怪作。後半15分のどんでん返しに次ぐどんでん返しの果てに迎えるエンドロールで映し出される前田敦子の美しさは必見。正直映画というよりは「60分間のミュージックビデオ」と言ったほうが妥当かも。

17位 『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

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 中途半端な身内って本っっ当にクソだよな!

16位 『キャプテン・アメリカ/ウィンターソルジャー』

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 70年代ポリティカル・スリラーを2014年の最新技術でブラッシュアップした傑作。MCU上でもターニングポイントとなる重要作ということでストーリー自体も面白いのに加えて、『フレンチ・コネクション』『ヒート』オマージュのカーチェイス、アクションシーンや、マーベル作品が持つユーモア要素をバランス良く練りこんだ脚本、演出が素晴らしい。高速→公道の銃撃戦やSHIELD本部からの脱走シークエンスとか最高でしょ!

15位 『フューリー』

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 アメリカの鼻垂れ坊主がドイツで戦闘マシーンになるまでの2日間をお得意のグロテスク&バイオレンスで描いたデヴィット・エアーの作風丸出しの一本。『サボタージュ』が連続殺人という、どちらかというと劇的というか作られたグロテスクさだったのに対して、戦場で淡々と殺されていく兵士たちをウェットさを排除した乾いた視点で描いている本作の方が好み。

14位 『6才のボクが、大人になるまで。』

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 「人生に伏線も要点もない」というテーマを映画で表現するとこうなるのかと唸らされた。散々親の問題に振り回されてきた主人公がようやく自分で人生の選択を行えるようになった姿は唯々美しかった。あと序盤のイーサン・ホークのハイテンションっぷりが火曜サプライズ柳沢慎吾にしか見えなかった。

13位 『紙の月』

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 冷たい空の色や「夫からの電話とプリンターの故障の間で取り乱す」シーン*1はフィンチャーっぽいなと思った。小林聡美のTHE局感も最高だし、何よりラストの急展開はとにかく気持ちがいい。最高のアンチヒーロー映画だよ。「一緒に来ます?」

12位 『そこのみにて光り輝く』

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 函館を舞台にしたニューシネマというべきか。ある過去から自責の念に囚われ、どん底にいた男が擬似家族の中に一瞬でも見た光が再び消えていく中でどうにか再生の予感を掴むまでの姿を演じきった綾野剛はもちろん、登場人物それぞれが背負う過去を説得力と共ににじませる俳優陣の演技が素晴らしい。ジンギスカン食べたい。

11位 『猿の惑星:新世紀(ライジング)』

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 「どうして戦争は無くならないのか?」という問題に対して、途中式を省くことなく誠実かつ丁寧な解答を提示したという点で評価したい。戦争を望む者が一度引き金を引いてしまったことで、後戻りできない雪だるま式に戦いが激しさを増す様子をマット・リーブスお得意のPOV、長回しでこれでもかと見せつける大迫力の映像は映画館でこそ味わうべき。

*1:ソーシャル・ネットワーク』でエドゥアルドがザッカーバーグからの電話と燃えるゴミ箱の間で取り乱すシーン

REMEMBER MY NAME 『ブレイキング・バッド』

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Breaking Bad Trailer (First Season) - YouTube

10月3日にファイナルシーズンのセル&レンタルが開始された『ブレイキング・バッド』だが、自分はhuluでいち早く全シーズンを観賞できたのでこのタイミングでブログ更新。

あらすじは田舎のぱっとしない科学教師ウォルターが麻薬ビジネスに関わることで、地元のギャング、そいつらの元締め、麻薬王と対決せざるを得なくなる倍々ゲームが6シーズン全62話の中で繰り広げられると言った内容。

シーズン1、2序盤はウォルターと彼の元教え子のジェシーで繰り広げられるスラップスティックコメディの要素が強い。また、彼らがビジネス拡大していく中で立ちはだかる”麻薬界の帝王”が登場する辺りから作品内の空気が変わり、キャラクター同士の騙し合いや殺戮の色が濃くなってくるが、シーズン1のちょっとした人物が後半のストーリーでとんでもない鍵を握っていたりするため中々油断できない。

作品内の演出も歴代のマフィア・ギャング映画へのオマージュに溢れており、それらの元ネタを英語版wikiでチェックするだけでも十分面白い。だが、本作がスゴいのはそれらのオマージュを単なる映画ファン向けのサービスに留まらせず、主人公ウォルターが抱える「中年の危機」「男としてのプライド」「才能と矛盾」といった苦悩をこれでもかと表現する上で最高の演出となっていることだ。麻薬ビジネスには一切関わったことの無いウォルターが闇の世界に手を染めていくことで彼の本性そして真の野望が露になっていく姿は『ゴッドファーザー』シリーズのアルパチーノを彷彿とさせるし、後半ではその名もずばり『スカーフェイス』を親子で観るシーンが登場する。

もしかしたら自分が歩めていたかもしれない栄光の人生を悔やみながら、片田舎の科学教師と洗車場のバイトで日銭を稼ぐしかなかったウォルターに、”麻薬精製”という彼の能力を最も活かせる場が与えられてしまったがために起こる悲喜劇、そして最終話で彼が迎える運命、全てが現在アメリカエンタメ界最前線のクリエイター達*1の卓越した脚本・演出によって描かれた本作。ネタバレ無しで語るのは無理なので、少しでも興味が有るなら一見の価値有り。

 

*1:全シーズン中最高評価の『Ozymandias』を手がけたライアン・ジョンソンは『スター・ウォーズ』シリーズ新作スピンオフ監督に内定

とんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでとんでまわってまわってまわってまわる『イントゥ・ザ・ストーム』

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映画『イントゥ・ザ・ストーム』予告編 - YouTube

ディザスター映画は自然に対して人間がいかに無力なのかを表現し続けてきた。時にはそれが隕石だったり地軸のズレ、ひいては怪獣に姿を変えて天災の凶悪さを示してきた。『イントゥ・ザ・ストーム』では巨大竜巻が1つの街を縦横無尽に破壊する様がPOV方式中心のカメラワークで映し出される。POV中心の映像作りの為に作品中で登場するカメラの台数が異常で、竜巻の撮影を生業とするストームチェイサーが乗り込む重装甲車”タイタス”に搭載されたカメラだけで24台、それに加えてほぼ全ての登場人物の手元にカメラが用意され、学校の監視カメラや報道ヘリの映像まで駆使される。登場人物が車内で会話しているときも、それぞれの背後から話し相手の表情を撮るために別の登場人物がカメラを構えているのには笑ってしまった。ただ、余りに序盤でPOVでの映像を強調しているため後半になってくると明らかにPOVで撮る必要のない映像だったり、一体誰が撮っているのか分からないPOVのショットも出てくるので決してバランスは良くない。*1

予告でも猛烈にアピールしているように、竜巻シーンの迫力は見事。竜巻登場までは一部のシーンを除いてBGMが極力排除されているため、重低音の不吉なBGMと共に竜巻が唸りを上げて登場するシーンは思わず見ているこちらも力んでしまうほど。特に竜巻が主人公の通う学校に接近し、全校生徒が校舎内で待ち構えるシーンでは怪獣のうなり声のような竜巻の爆音が近づくのをただただ屋内で耐えるしか無い登場人物の恐怖が同じ屋内でその爆音を体感している観客にもひしひしと伝わってきた。

人物造形に関してはベタベタとしか言えないが、GoPro使ったバカ動画で有名になろうとするジャッカスコンビは巨大竜巻の緊張感を良い意味でほぐす良キャラだっただけに、中盤でのあまりに中途半端な途中退場は残念だった。自然に対する人間の無力さはしょうがないのかもしれないが、ラストが延々と登場人物たちが「グギギィィィッ」と必死に耐えるしかなかったのはちょっともったいなかったかも。ただ、それ以上に超巨大台風の破壊描写が笑ってしまうほどド派手でおつりがくるぐらいだし、爆音からの静寂や文字通りの”ゼログラビティ”の美しさは大画面で見る価値有り。上映時間も90分切っていて、さくっと観れるのでオススメ。

*1:製紙工場での救出シーンや直前の”海猿”風遺言ビデオレターとか

”『エリーゼのために』は『自分のために』でしょ。”『5つ数えれば君の夢』

 

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映画『5つ数えれば君の夢』予告編 - YouTube

学園映画は『桐島、部活やめるってよ』の登場でそれ以前とそれ以降に分けられた。『5つ数えれば君の夢』は『桐島』以降の学園映画の中で最も『桐島』的でない作品だろう。『桐島』では「学校=社会」の箱庭設定が徹底され、学校内部の人間関係、人物造形を実社会全体に当てはめられる一種開かれた作品だった。対して『5つ数えれば君の夢』では学校の外、つまり女子校生である登場人物に対する絶対的他者である男性の視点が絶えず意識されている。ミスコンで優勝して男子校ミスターである彼氏に認めてもらおうと必死に思うがあまり悲劇的結果になる宇佐美(庄司)や、自分が愛情に等しい尊敬の念を抱く兄に見てもらおうと懸命に働く委員長(中江)など、ジェンダー論や、女子校という閉じた社会に対する冷徹なまでに客観的な存在がおかれている。また、自分自身の不甲斐なさから宇佐美を狂信し、共依存にいたる都(小西)や自らの夢に潜む不純さに悩むさく(山邉)の在り方も作品が持つ不安定な美しさを際立たせている。

映像手法も興味深い。ロッカー上にふてぶてしく横たわるりこ(新井)が教室が出るまでをパンで切り取ってから各キャラの立場をスプリットスクリーンで手際よく、かつ詩的に描くオープニングや、各キャラのターニングポイントとなる長台詞のシーンでじわりじわりとカメラがキャラに近づくことでもたらされる緊張感やクライマックスの<跳躍>の撮り方など大林宣彦を思わせるカメラワークが多用される。また「自分の内面と外側の世界がつながる」後半以降は序盤で構築された各キャラの内面がそれぞれの形で溶け出す場面が用意されているが、これまた大林宣彦を思わせる哲学的かつ抽象的な台詞の応酬の中でハッとする台詞が放り込まれるから油断できない。特に文化祭後の委員長と兄の会話は映像表現、台詞共に作品中最も抽象的である為にここで離脱してしまう観客が出てもおかしくないかも。映像表現単体ではミスコンでのさくのパフォーマンスシーンの美しさは一見の価値有り。純白のドレスを纏って日の光を浴びながら全力で自由の舞踏を見せつける姿は、個人的に血染めのドレスで破壊の限りを尽くした『キャリー』を連想した。

エンドロールでは素の女子流メンバーが作品中とは打って変わって持ち前の仲の良さを振りまきながら夜のプールサイドで遊ぶ姿を長回しで見せたかと思ったら、ラストで余りに上品なカーテンコールで幕を下ろされるため、実に気持ちいい不思議な余韻で包まれる。5人のキャラ全員にそれぞれの葛藤や関係性が90分弱で描かれるため1度の鑑賞で全てを受け止めきるのは難しいが、その消化不良感も本作の魅力だと思う。

 

 

 

2010年代ベストトラックベスト30(洋楽篇)

 

というわけで洋楽篇です。

  • Arctic Monkeys "Do I wanna know?”
  • ADELE “Skyfall”
  • BEADY EYE "Four Letter Word"
  • Bruno Mars "Runaway Baby”
  • Coldplay "Every Teardrop Is a Waterfall”
  • Daft Pank “Derezzed”
  • Fall Out Boy "The phoenix
  • Foo Fighters “Walk”
  • Green Day "99 revolutions”
  • Idina Menzel "Let it go”
  • Imagine Dragons “Radioactive"
  • Karen O. Trent Reznor  "Immigrant song”
  • KASABIAN "eez-eh”
  • LINKIN PARK “iridescent”
  • MIKA VS. RedOne"Kick Ass(We Are Young)”
  • MUSE "Follow me”
  • My Chemical Romance "The Only Hope For Me Is You”
  • Nine Inch Nails "Came Back Haunted"
  • Noel Gallagher's High Flying Birds " Everybody's On the Run"
  • Owl City & Carly Rae Jepsen  "Good time”
  • Phoenix “Entertainment”
  • Red Hot Chili Peppers "The adventures of raindance maggie “
  • Rihanna  feat. Calvin Harris "We Found Love”
  • ROCK OF AGES "Don't stop believing”
  • Skrillex  "Scary Monsters and Nice Sprites"
  • Taylor Swift “Red”
  • Tegan and Sara feat. The Lonely Island “Everything Is Awesome”
  • Trent Reznor, Atticus Ross "Hand Covers Bruise”
  • Two Door Cinema Club "Undercover Martin"
  • VAMPIRE WEEKEND “Cousins"

 

Arctic Monkeys - Do I Wanna Know? (Official Video ...

  • ADELE “Skyfall”


Skyfall Opening Credits (HD) - YouTube

  • BEADY EYE "Four Letter Word"


Beady Eye - Four Letter Word - YouTube

  • Bruno Mars "Runaway Baby”


Bruno Mars - Runaway Baby (WITH LYRICS) - YouTube

  • Coldplay "Every Teardrop Is a Waterfall”


Coldplay - Every Teardrop Is a Waterfall - YouTube

  • Daft Pank “Derezzed”


Daft Punk- Derezzed (OFFICIAL TRACK)(FULL ...


Fall Out Boy - The Phoenix (Official Video) - Part 2 ...


Foo Fighters. Walk. - YouTube


Green Day - 99 Revolutions (LIVE) - YouTube

  • Idina Menzel "Let It go”


FROZEN - Let It Go Sing-along | Official Disney HD ...

  • Imagine Dragons “Radioactive"


Imagine Dragons - Radioactive - YouTube

  • Karen O. Trent Reznor  "Immigrant song”


The Girl with the Dragon Tattoo - Immigrant Song ...


Kasabian - eez-eh - YouTube


Linkin Park - Iridescent [HD] - from Transformers ...

  • MIKA vs. RedOne "Kick Ass(We Are Young)”


MIKA vs. RedOne - Kick Ass (We Are Young) - YouTube

  • MUSE "Follow me”


Muse - Follow Me - YouTube


The Only Hope For Me is You -My Chemical ...


Nine Inch Nails - Came Back Haunted - YouTube

  • Noel Gallagher's High Flying Birds " Everybody's On the Run"


Noel Gallagher's High Flying Birds - "Everybody's ...

  • Owl City & Carly Rae Jepsen  "Good time”


Owl City & Carly Rae Jepsen - Good Time - YouTube


Phoenix - Entertainment (Official Video) - YouTube


Red Hot Chili Peppers - The Adventures of Rain ...

  • Rihanna  "We Found Love ft. Calvin Harris"


Rihanna - We Found Love ft. Calvin Harris - YouTube


Don't Stop Believin' - Various Artists (From "Rock ...

  • Skrillex "Scary Monsters and Nice Sprites"


Skrillex - Scary Monsters and Nice Sprites w ...


Taylor Swift - Red - YouTube

  • Tegan and Sara feat. The Lonely Island “Everything Is Awesome”


Everything Is AWESOME!!! -- The LEGO® Movie ...

  • Trent Reznor, Atticus Ross "Hand Covers Bruise”


Hand Covers Bruise (HD) - From the Soundtrack to ...


TWO DOOR CINEMA CLUB | UNDERCOVER ...

  • VAMPIRE WEEKEND “Cousins"


Vampire Weekend - 'Cousins' (Official Music ...

 

2010年代ベストトラックベスト30(邦楽篇)

『ネットの音楽オタクが選んだ〜』シリーズで有名な音楽だいすきクラブでこんな企画があったので勝手ながら参加してみた。 

2010年代限定でのベスト選びが以外と難しくて、思いつくままに挙げていったら50曲を軽く超えてしまった。そこで1アーティスト1曲ルールを勝手に作って絞りに絞った結果がこんな感じ。

(順不同)

やっぱりこういうベスト作りするとセンス良く見られたい欲がどうしても出てきがちなのでそこは抑えつつ、それでもなるべく幅広いラインナップにしようと思ったけど 結局偏った感じに...

余裕が有ったらそれぞれにコメント追記するかも。

一応現段階でのマイベストはThe Birthday 『ROKA』

 

 

 

 

 

 

少なくとも俺はこんな未来望んでない『STAND BY ME ドラえもん』

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映画『STAND BY ME ドラえもん』予告編 - YouTube

「アツイ!ヤバイ!間違いない!山崎メソッド!(©宇多丸)」による最新作『STAND BY ME ドラえもん』を観た。

『ドラ泣きしませんか?』『全ての子供経験者の皆さんへ』といったキャッチコピーの時点でかなり胸はざわついていたが、公開後巻き起こった原作ファンからの酷評を見て「これは劇場で見届けなければなるまい」と決意して観賞した。

個人的なドラえもん遍歴を簡単に説明しておくと、子供の頃は金曜日は毎週欠かさずアニメを見ていたし、児童館に置かれていたてんとう虫コミックスも全巻読んだ記憶がある。また、当時放送していた『ウッチャンナンチャン炎のチャレンジャー』の『ドラえもんクイズ100問できたら100万円』に出るためにひみつ道具百科本やキャラ別特集本を読みあさったこともあった。なので本作も予告編を見て原作のどの話を組み合わせているのかは大体分かるぐらいの知識量は持ち合わせているつもりだ。

山崎・八木共同監督としては本作が2作目で、一作目は2012年に公開された『friends もののけ島のナキ』。こちらは浜田広介原作『泣いた赤鬼』を元にアレンジしたファミリーファンタジー映画。


『friends もののけ島のナキ』予告 - YouTube

内容を一言でまとめるなら『泣いた赤鬼』×『モンスターズインク』で、こちらも『泣ける』を前面に押し出した宣伝作りだった。また、山崎監督作で遡れば『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を原作とした『BALLAD 名もなき恋の歌』のように、世間で一定の評価を既に得ている作品に山崎監督の考える「泣ける要素」を付け足す手法が一種の「山崎メソッド」と呼ばれている所以だろう。

というわけで肝心に『SBM ドラえもん』だが、原作のエピソード7話分を90分で一つのストーリーにまとめ上げる作りとなっている。話の流れをおおまかにまとめると、<ドラえもんとの出会い>→<ひみつ道具のドタバタ>→<のび太としずかちゃんの結婚>→<ドラえもんとの別れ>といった構成なのだがこの時点でかなり無理が出てきている。そもそも、原作は1話完結の日常ジャンルであるため基本的には話ごとで設定が毎回リセットされる。だが、本作だと全てのエピソードが地続きとなってしまう為齟齬がかなり発生している。それが顕著となるのが、『雪山のロマンス』でのタイムループ(?)設定だ。要するに大人のび太は子供のび太のピンチを記憶しているからいざというときに助けにきてくれるというもの。この設定を一度出してしまったが故にそれ以降ののび太の行動に緊張感が無くなる上に、”現在の行動の積み重ねがしずかちゃんとの結婚を左右する”という命題も説得力を無くすように感じられた。

ストーリー上の問題点は多々有るがここで留めておきたい。なぜなら、本作がここまで一部で強い怒りを呼び起こしているのは単なる脚本の問題ではなく、数えきれない程の”設定改変”によるものだからである。

第一に「成し遂げプログラム」設定である。この設定の問題点については既に多くの指摘がなされているので説明は省くが、「のび太に真っ当な人生を歩ませる」という命題をセワシによって強制され嫌々ながらのび太の面倒をみるドラえもんなどドラえもんではなく只の青色狸ロボットでしかない。他人に強制された善意の気持ち悪さとはこのことだ。

第二にあまりに過剰な企業広告。以前からTOYOTAの『実写版ドラえもん』CMが物議を醸していたが、本作ではご丁寧にも未来のび太の声は妻夫木聡が担当している。*1そして大人のび太の愛車にはデカデカとTOYOTAのエンブレム!そして大人のび太が住む約20年後の練馬区は車が空を飛び交いTOYOTA,パナソニック,森ビル,グリコの高層ビルが乱立する謎の大都市に変貌していた!裏山や空き地が有る長閑な街が一人の子供が大人になるわずかな期間でここまで発展するのはどう考えてもディストピアSF!原作では大人のび太の時代とセワシの時代はちゃんと描き分けられており、大人のびたの街は現代2014年の風景に近いため、制作者が完全に大人のび太セワシの時代を混同している様にしか思えない。企業広告の話に戻るが、原作の人気ポイントとしてパロディネタがよく上げられる。『コケコーラ』や『アカンベーダー』といったあまりに馬鹿馬鹿しいパロディこそが持ち味だったのに、実在の企業名がこれでもかと映画館の大画面に映し出される姿を見て何を思えというのか。そんなこと思ってたらこんなCMまで作られてて絶句。ここまできたらホラーだよ。


ドラえもん 3D映画 完成披露試写会 CM [STAND BY ME ドラえもん]完成披露 ...

 

*1:のびた以外は現代も未来も同じ声優が担当。唯一のび太だけが大人の自分と子供の自分が会話するといえども雑過ぎる。