殺人一家に明日はない『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』

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The devils rejects - YouTube

それは自分が中1の頃、家族に連れられて地元のショッピングモールに買い物に行ったときの事。親が買い物に行っている間、自分は新星堂で暇つぶしをしていた*1のだがそのとき目にしたあるDVDとCDのジャケットにカルチャーショックを受けた。

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改めて見ても漫☆画太郎のばばあとキャプテン・ホールディングのパンチ力よ。何の事は無い。『ロッキンポ殺し』と『デビルズリジェクト』のジャケットである。

「きっとこのピエロのおっさんがサーカスに若者を連れ込んで残酷ショーでも開くんだろうな」と勝手な思い込みをしたまま月日が経ち、本格的に映画を見る習慣がつき始めた頃各所で『デビルズリジェクト』を激賞する文章を読む機会が増えた。ジャケットを見てもらえれば分かると思うが、自分の中では「ピエロのおっさん=マーダー・ライド・ショーという映画」の認識だったので正しい認識である「ピエロのおっさん=デビルズリジェクト」に少し戸惑ったが、近所のレンタル店に本作が置いていなかった事も有り中々見れずに居た所、何とhuluでHD配信していたので早速視聴。*2

あらすじは悪魔も恐れる(Devil's Rejects)殺人一家であるファイアフライ家と一家に兄を殺された保安官を巡る復讐劇であり、警察がファイアフライ家に殴り込みをかけようと家を包囲するシーンから映画は始まる。初っ端から『ワイルド・バンチ』並の銃撃戦が繰り広げられ、母親であるファイアフライが抵抗叶わず銃を置いたタイミングでオープニングタイトルに入るのだが、これがまあカッコいい!これに限らず監督ロブ・ゾンビの趣味丸出しの選曲が各シーンにちりばめられており一々カッコいいんだからたまらない!

そこに『時計仕掛けのオレンジ』さながらの残虐行為を嬉々として犯しまくるファイアフライ家の活き活きとした姿がかぶされば自分がどっちの味方をしているのか忘れる程だ。

アイスクリーム買う為に車を止めるかどうか車内で口論するシーンなど「殺人一家も人間なんだ!」と言わんばかりの70年代ロードムービー的展開と復讐心に取り付かれ正気を失っていく保安官の姿が平行して描かれる事で観客の中にある倫理観、善と悪の構造をこれでもかと突き崩す。

同じく観客の倫理観を突き動かす作品である『タクシードライバー』や『俺たちに明日はない』へのオマージュを捧げながら描かれる逃避行を通じて、最初は到底共感できそうもなかった非常に胸くそ悪い殺人一家に少しずつ情が湧いてしまい、まさか最後は男泣きという展開には心底驚かされた。

タランティーノがコルブッチを始めとするマカロニウェスタン×黒人エクプロイテーション映画のオマージュで作った『ジャンゴ』で黒人差別問題を生々しく浮かび上がらせたように、ロブ・ゾンビは70年代アメリカン・ニューシネマのオマージュで作り上げた『デビルズリジェクト』で反体制・自由意志の本質を描き上げたのだから傑作と言う他ない。*3

世界の危機にも関わらず基地でエセ正義口論する科学忍者と比べ物にならないよ!

<映画と『自由意志』については町山さんの批評が素晴らしいので参考までに>


町山智浩の「ダークナイト」① - YouTube

 

 

 

*1:確かレンジの『*〜アスタリスク』のV2とポルノの『ネオメロドラマティック』の初登場首位が争われていた週

*2:トゥモロー・ワールド』のように未Blu-ray作品もHD画質で観られるのは有り難い。

*3:しかもこの内容を1時間40分で収めたんだからやっぱりすごい。