DOCUMENTARY OF THE YELLOW MONKEY『パンドラ ザ・イエローモンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』

 『パンドラ ザ・イエローモンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』ユナイテッドシネマ豊洲で観賞。

予告篇:劇場版『パンドラ ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE』 - YouTube

 1998年4月から1999年3月まで計113公演という怒濤のロングツアーに挑んだTHE YELLOW MONKEYの姿と2013年時点のバンドメンバー含む関係者のインタビューで構成されたロックドキュメンタリー。

 1998~9年当時のイエモンはCDセールスが絶好調であり『BURN』や『LOVE LOVE SHOW』などヒット曲を連発していたため、表向きには絶頂期に見えていたがツアー中のMCにおいて「このツアーは失敗でした」と吉井が吐露するなど、精神的にも肉体的にもかなりハードなツアーだった事はファンの間ではよく知られている。

 2007年に出版された『失われた愛を求めてー吉井和哉自伝』でもツアー中に見舞われた家庭問題や事故について言及されていたが、具体的なツアー中の内容に関する資料や映像は今回の映画化まで陽の目を観る事は無く、事実上封印されてきた。

 本作ではファンの間で語られてきた「吉井の家庭崩壊」「『今回のツアーは失敗でした』のMC」「スタッフの死亡事故」「フジロックの悪夢」などがバッチリと映像に収められており、まさしくパンドラの箱を開けるが如く繰り出される衝撃の映像や発言に飲み込まれそうになった。

 特に本作の白眉がバンド解散の遠因となった「1997年第一回フジロックの悪夢」についてのシーン。第一回フジロックといえば超巨大台風&杜撰な運営によるフェス自体の大失敗の印象が強いが、その中でイエモンFoo Fighters→Rage Aginst The Machine→イエモンRED HOT CHILI PEPPERSというSUMMER SONIC2013におけるミスチル*1以上にアウェイなタイムテーブルに組み込まれながら、且つ豪雨の中で演奏せざるを得なかった。それに加え、ヒット曲を控えたセットリスト*2と、前述の豪雨の影響もあり観客の反応は芳しくなく、吉井は自伝で「自分たちとしてはフジ・ロックにふさわしい洋楽的な楽曲を並べて演奏したにもかかわらず、それが伝わらない厳しいライブだった」と回想している。また、「変な話、あのフジ・ロックの挫折感で、解散しちゃったようなもんだから。解散の理由の何%かは」と綴るなど、本人にとって厳しい経験となった。

 以上の事は既出のインタビューなどで知られていたが、何故イエモンフジロックで壁にぶつかってしまったのかについて当時のテッククルーだった加藤俊一郎氏や長年イエモンを撮り続けてきた有賀幹夫氏による「当時のメンバーは最新のUSロックよりもコテコテのグラムロックに傾倒していたため、USロック最前線のバンド達に挟まれたのが最大の失敗。」「洋楽との音圧の差に完敗してしまったの一言」「バンドがこのまま女の子受けのするようなグラムロックに突き進んでしまう前に、男の子達の胸を踊らせるようなUSロックも取り入れる必要が有った。*3」などといった証言に加え、デイブ・グロールに「何だ!?あのジミーペイジみたいなヤツは!?」と言わしめた『天国旅行』のライブ映像だったり演奏後の楽屋での吉井の焦燥しきった顔など「悪夢のフジロック」を全力で清算するかのような情報量に口を開けて観ているしかなかった。

 これだけの情報量を見事に編集したのが高橋栄樹監督率いる編集チーム。もはやAKBの印象が強くなった高橋監督だが、「SPARK」以降の「パール」と「プライマル。」を除く13曲のシングルでPV監督を務めている。PVとしては異例ともいえる時間的余裕と自由な表現を許容され、PVだけでなく映像作品「BLUE FILM」、ライブビデオ「RED TAPE」などで独自の世界観を持った巧みな映像表現を製作し、吉井から「イエローモンキーの第5のメンバー」と言わしめた程だった。


楽園 / THE YELLOW MONKEY - YouTube

 AKBドキュメンタリー(特に2作目)と本作で共通しているのがどちらも、ドキュメンタリーありきの撮影ではなく、既に撮り終えてしまった過去の映像のアーカイブの中から編集しなければならない制作状況が挙げられる。AKBドキュメンタリーではAKB48Gにまつわる膨大な映像から「震災とアイドル」「アイドルであること」といったテーマを見事に繋ぎ合わせて観客に提示したのに対して、本作では「ロックバンドの業」がこれでもかと描かれている。ドキュメンタリー映像の間に挟まれるライブ映像が皮肉にも登場人物の現在や未来を暗示してしまっている構造もAKBドキュメンタリーとの共通点だろう。*4

果てしなく追いかけて掴めたのは

偉そげで無愛想な夢のレプリカ

それよりもこの愛を君に見せたい

ごらんよこれが裸のボクサー

『パンチドランカー』

赤く燃える孤独な道を

誰のものでもない髪をなびかせ

道の先には蜃気楼

あの日を殺したくて閉じたパンドラ

『BURN』*5

  作品パンフレットのインタビューでも「単にファン向けのDVDにするのではなく、このツアーが内包する普遍的な何かを大勢の人に届けたかった。」と監督自身語っているように、本作は決して内輪ウケを狙ったようなファン向けロードムービーではなく、とてつもない壁にぶつかりながらも己の道を突き進んだ男達の姿が描かれた極めて普遍的な映画である。

*1:Smashing PumpkinsMr.ChildrenMUSE

*2:10曲中7曲が非シングル

*3:本編中に流れるライブ映像における9割以上が女性観客。男性客は全くと言っていい程見当たらない

*4:「アイドルと恋愛」がテーマだった3作目における東京ドームライブでの『恋愛禁止条例』etc

*5:こういう場面であからさまに『TVのシンガー』を使わないのがミソ