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2013年宇宙の旅『ゼロ・グラビティ』

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映画『ゼロ・グラビティ』予告1【HD】 2013年12月13日公開 - YouTube

ゼロ・グラビティ』@TOHOシネマズ ららぽーと船橋 TCX

 映画とは「非日常を味合うための娯楽」であることを再定義する作品。美しく暖かい母なる地球を背景に船外作業に努める主人公2人を描くショットから、高速で飛来する人工衛星の破片がシャトルを破壊したことで彼らが暗く冷たい宇宙空間へ身一つで投げ出される約20分間の超ロングテイクで本作は幕を開ける。その超ロングテイクの間ではカメラの動きもシャトル破壊前は無重力の中を安定したアングルで役者との距離を一定に保っていたのに対し、事態が急変してからは文字通り役者との距離関係も崩壊し、ひたすら上下左右を動き回るショットで観客を酔わせにかかる。特に投げ出されたストーン博士(サンドラ・ブロック)にズームアップしたカメラがそのまま宇宙服の中に入り込み、彼女の主観映像と移り変わるシークエンスは本作の白眉。

 その他にも音一つない中で巨大な宇宙ステーションが一瞬で木っ端微塵になるイメージや無重力の船内を縦横無尽に移動するストーン博士を後ろから追うロングテイクなど最新鋭の撮影技術を駆使した圧巻の映像のつるべ打ちで90分間飲み物を手に取る余裕も無い程である。

 監督であるアルフォンソ・キュアロンの特色である長回し&異常なまでの映像技術の集大成*1とも言うべき本作だが、決してそれらを単なる「見世物SF」に終わらせない点として過去の宇宙SFからの引用、そしてそこから語られるテーマが挙げられる。『2001年:宇宙の旅』から『WALL-E』に至るまでの過去作へのオマージュを用いて語られる本作のテーマは「死と誕生」。

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  上の写真のような胎内のイメージや宇宙服同士を繋ぐコードがへその緒のメタファーだったりと例を挙げればキリがない*2程だが、90分という短い時間の中でそれらのメタファーをストーリー上の伏線としても無駄無く機能させる事で中だるみ一切無しのジェットコースタームービーに「死と誕生」というテーマが組合わさった見事な多層構造が作り出されている。

 だからといって何かしらの予習が必要な作品かと言ったら全くそうではない。むしろ予告編も観ずに映画館に直行するのが本作のスリルを120%味わうベストな方法だろう。観賞後に作品パンフレット*3を観て本作の持つ真の意味を理解した後で更にもう1度観るのがオススメ。

 個人的な感想としてはジョージ・クルーニーのスーパー伊達男っぷりにちょっと笑ってしまった。

 

(参考)あるシーンの元ネタ


WALL∙E “Space Walk” Clip - YouTube

*1:スペシャルサンクスでギレルモ・デルトロ&ジェームズ・キャメロン&デビッド・フィンチャーが挙げられている

*2:その他にも各々船内に置かれたキリスト画, 仏像など色んな解釈の余地がある。

*3:町山さんの評論が安定のクオリティなので一読の価値有り