狂っちゃいないぜ 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

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Mad Max: Fury Road - Official Main Trailer [HD ... 

 シリーズ30年振りの新作となった『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をTOHOシネマズ新宿のIMAX 3D字幕版で2回観賞してきた。感想を一言で述べるなら「ここまで血沸き、肉踊り、そして涙溢れる美しい映画があっただろうか。」と言いたい。そして決して「ヤバイ!」「狂ってる!」といった言葉では片付けられない強い感動と興奮を覚えたことを何度でも強調したい。

 ストーリーの基本構造は上映時間2時間「ひたすら追いかけられる」だけの話だ。*1マッドマックス2』クライマックスのカーチェイスがテンポを変えながら2時間続くようなものをイメージしてもらえたら大丈夫。

 だが、そんなシンプルな基本設定の上にストーリーに含まれた幾つものテーマ、そしてフレッシュなアクションてんこ盛りの映像が2時間ノンストップのとんでもない密度で繰り出されるのだ!

 アバンタイトルから油断できない。ワーナーのロゴが出た瞬間から大音量の排気音が響き渡り『マッドマックス2』のオープニングを思わせるマックスのモノローグから幕を開ける。次の瞬間、いきなりウォーボーイズVSマックスのカーチェイスが始まり、気づいたら反撃する間も無くインターセプターがクラッシュされマックスが囚われの身となってしまう。謎の部屋で髪の毛を剃られ、背中に”血液袋”としての情報が刻まれるマックス。首に焼印を押されてしまう一瞬の隙をついて部屋から逃げ出すが、手錠&猿轡という状況に加え、過去に暴走族によって命を奪われた妻子や助けられなかった人々の幻覚がフラッシュバックして苦しめられる。何十人ものウォーボーイズが追いかける中、ようやく出口にたどり着いたかと思うとその先は崖!空中にぶら下がるフックにしがみつき脱出しようとするが結局捕まってしまい砦の中に引きずり戻される。そこにタイトルがドーン!と出てくる流れだ。

 この一連のシークエンスで特筆すべきは「極度の高速カット割りの中での情報の出し方」だ。本作全体に言えることだがアクションシーンでのカット割りがとにかく細かい。*2このシークエンスでも逃げるマックス→追うウォーボーイズが数秒ごとに切り替わる間にマックスが見る幻覚がサブリミナル単位で挟み込まれるため映像内における情報量がとてつもなく多い。一歩間違えれば観客を置いてけぼりにした無秩序なドタバタアクションになってしまいそうだが、一つ一つの映像で見せるべき要素をフレームのど真ん中にしっかり置いているため、不思議と混乱しないのだ。*3そのため、話が掴めなくなることはないまま、高速カットの不思議な高揚感を味わえるというわけだ。


Mad Max Center Framed from Vashi Nedomansky ...

 上の動画で例として出されている中盤のマックス&ニュークスVSフュリオサの格闘シーンも高速カット割りが冴え渡っている。激しくカットが切り替わりながらも観客が注目すべき点がやはり中央に集められているため、アクションを目で追う必要がなく映像のインパクトを存分に楽しめる。特にIMAXのような大画面向きの演出だろう。本作の編集を担当したのはジョージ・ミラーの妻であるマーガレット・シックセル。アクション映画の編集は未経験の彼女を抜擢した理由として監督は「男が編集したら他のアクション映画と同じになってしまうからだ。」と述べている。

 編集に限らず、映像の情報量を高めている要素としてプロダクションデザインのクオリティが挙げられる。第一に色彩の豊かさだ。世紀末ディストピアを扱った作品はどうしても暗いグレー中心のカラーリングが多いのに対して、本作は予告でも出てくるカラフルな発煙弾など赤味の強いカラーリングが特徴的であり、ウォーボーイズの白ボディ、口に吹き付ける銀スプレー、そして話題の火炎ギターのインパクトも素晴らしい。そして、第二に、登場するガジェットや車の格好良さよ!監督の「どんな酷い環境であっても、そこに生きる人々は自らの手でできる限りの美しいものを作り出すはずだ。」との言葉通り、巨大スピーカーを搭載したドゥーフ・ワゴンやマッスルカー仕様のメルセデス・リムジンなど一度見たら忘れられない改造車のオンパレードである!しかも只のネタとして作っているのではなく一つ一つの改造車にちゃんとバックグラウンドがあるとのこと。

「まず、ドゥーフ・ウォリアーが存在するのにはロジカルな理由があります。言葉が発達する前、戦争や紛争では音楽がコミュニケーションの手段でしたよね。打楽器があったり、スコットランドではバグパイプがあったりしました。本作では車の騒音がとてつもなくうるさいので、あれだけのスピーカーで爆音を出さないと聞こえないわけですね(笑)。同時に、本作に登場するモノは一つ以上の目的があって作られているので、ギターは「フレイムスロワー」、つまり火炎を放射する武器としても使えるようになっています。」www.kotaku.jp

 そして本作において一番強調しておきたいのは「作品内で提示されるテーマ」の豊かさだ。「硬直化した家父長制の下に虐げられてきた女性たちの反逆」「過去への強い後悔にとりつかれた男への新たな仲間との団結による救済」などが主な作品テーマとして読み取れるが、その他にも「銃弾は死の種よ。植えられたら死ぬの。」というセリフのあとにその名も”種を守りし者(Keeper of the Seeds)”という植物の種を次の世代のために託そうとする老婆が登場したり、ラストシーンでマックスたちを迎える”ある人物”たちの姿などから監督ジョージ・ミラーの次世代への希望に満ちたメッセージを感じ取った時は胸が熱くなった。そして、熱血馬鹿なウォーボーイのニュークスが本当に素晴らしい!イモータン・ジョーを絶対神として崇めながら少しでも彼に認められたいと愚直なまでに突き進むも結局は彼に見捨てられてしまうニュークス。*4「英雄への扉が3回も開いていたのに全部ダメにしちまった…」と嘆いたニュークスが最後に見せる活躍は涙無しには見られない!

 長々と書いてきたが、2015年6月何を観るべきかといったら『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で間違いなし!早くしないと『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』にIMAXスクリーン奪われちゃうよ!!!

”If I'm gonna die, I'm gonna die historic on the fury road!!”

*1:ストーリーの内容が単純だと言っているわけではない

*2:一説によると本作全体で3500カットを超えているらしい。

*3:砦内を逃げ回る途中で、ウォーボーイズによって改造されているインターセプターのカットが挟み込まれたりなど

*4:砦の出撃シーンで一人だけ何が起こってるかわからない感じとか最高!